南アフリカランド(ZAR)やトルコリア(TRY)は、日本円とは比べ物にならないほど高金利が魅力の通貨です。しかし、オイシイ話には必ず裏があるように、高金利通貨の本来の性質を理解すると、必ずしも安心して購入・保有できないことが分かってきます。
一般に金利を高く設定する理由には、以下の理由があります。
金利を上げることで、その通貨を保有したい買い手が増え、通貨価値は高まる傾向があります。
しかし、人気・需要のある通貨は、そもそも金利を上げなくても保有したい買い手が現れます。逆に言うと、金利が通常よりも高金利に推移する通貨というものは、慢性的に不人気で信頼性・信用性が低いことを指しています。
個人的な感覚ですが、金利が8%を超えるものに関しては通貨保有リスクが増すと考えています。
債券市場においては、債権利回りが7%を超えると危険水準だと言われています。
2010年頃に騒がれたギリシャ危機(ソブリン危機)の例では、ギリシャ債券利回りが7%を超えて市場に混乱が生じ、ユーロが大幅に下落しました。
南アフリカ共和国の通貨である南アフリカランド(ZAR)は、高金利通貨として人気があります。南アフリカ共和国の経済は、金をはじめとする鉱物資源に支えられており、特に金は世界有数の産出国です。金の他には、ダイヤモンド、プラチナ、ウラン鉱石などの鉱物資源も豊富に産出されます。
少数派である白人が多数派の黒人を支配・差別するアパルトヘイト(人種隔離)政策が敷かれていた過去を持ち、黒人差別が根強く残っています。1990年代にアパルトヘイトは廃止されますが、それに伴って白人資本が流出し、政情不安・失業率の悪化といった影響を及ぼしています。
南アフリカランドの金利は高金利に推移していますが、その背景にはこういった政情不安が密接に絡んでいます。
トルコの通貨であるトルコリラは、慢性的なインフレに悩まされ続けられてきた歴史があります。何度か通貨価値を引き下げるデノミネーションも行われています。
デノミネーションとは、通貨単位を1/10ないし1/100などに引き下げる(又は引き上げる)ことをいいます。
通貨価値の下落に伴ってインフレーション(物価高)が進んでしまうと、商品を通貨で表すのが困難になってきます。ハイパーインフレーションと呼ばれる現象で、かつては第一次世界大戦に破れたドイツが多額の賠償金を課せられ、マルク通貨のハイパーインフレが起こっています。
記憶に新しい所では、ジンバブエ共和国のジンバブエ・ドルがハイパーインフレに見舞われています。
インフレによって桁が溢れてしまった通貨の表示桁数を引き下げるめに、デノミネーションが行われます。表示桁数を引き下げるだけなので、ハイパーインフレ前から通貨保有していた人達の評価損失が戻ってくることはありません。
トルコ経済は1990年代から度重なるインフレに悩まされ国内経済が減速、2000年には金融危機からIMFの管理下に置かれます。また2005年には、100万トルコリラを1トルコリラとするデノミネーションを行っています。(100万分の1)
こんな国の通貨、大金はたいて保有したいと思いますか?
南アフリカランドやトルコリラは、長年に渡ってゼロ金利政策が敷かれている日本の投資家にも人気の高い通貨です。円で高金利通貨を調達する円キャリートレードもまだ健在で、高いスワップポイントを目当てに大金をつぎ込む投資家も後を絶ちません。
しかし冷静に一度立ち止まって考えてみてください。これら政治情勢すらよく分からない国々に、自身の大切な資産を何十%もつぎ込むことの危険性を。
南アフリカ共和国やトルコの政治情勢にどれだけ精通し、国内状況の把握ができているのでしょうか?何かが起こってしまう前に、適正な資産運用をもう一度考え直すべきです。
証券会社の多くは、これらの通貨が高金利である点だけを宣伝して、顧客にリスクの高い商品を平然と勧めていますが、甘い話には騙されないように。
通貨安によって金融資産そのものが目減りします。
FX歴 | 16年(2008年~) |
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年利 | 8~15%(破産確率を考慮) |