為替相場をはじめ、相場においては
という通説があります。
これはどういうことかというと、チャートにおける「買い」の局面は時間を掛けて少しづつ積み上がっていくが、売りの局面においては、それまで積み上げられた買いポジションを根こそぎ叩き落すように一気に急落する、というものです。
まるで、賽の河原で石を地道に積み上げてきたのに、鬼が突然現れて全部壊してしまったかのような印象を受けますね。
為替相場や株式相場、商品相場などにおいて、「買いはゆっくり」「売りは一気に」というのが通説なのですが、ここで幾つかの疑問が生じてきます。
本当のところはどうなの? それって気のせいなんじゃないの?
為替相場や株式相場などでよく見る「時系列チャート」と呼ばれるものは、買いが上方向、売りが下方向と決まっています。買いが先行する相場では上昇するようなチャートを形成し、売りが先行する相場では下落するようなチャートを形成します。
つまり、「見た目がそう見えるよう出来ているだけなんじゃないの?」 と思う方も居るかもしれません。
また、為替相場には自国通貨建てと他国通貨建てという概念があります。私たちが見慣れているUSD/JPYレートの表示方法は、1米ドル=110円のように外貨の1単位を自国の通貨で表示しています。(自国通貨建て)
それとは逆に、アメリカ国内では100円=0.9000ドルのように表示されたりします。(アメリカ人からすると自国通貨建て=私たち日本人からすると他国通貨建て)
ここで「JPY/USD」のように、買いと売りのチャートを反対にした場合、為替チャートは私たちの目にどう映るのか検証してみたいと思います。
これは先ほどのチャートを反対に表示したものです。(JPY/USDのイメージ)
違和感は感じませんし、実際にこのようなチャートを描き出す通貨ペアもおそらく存在します。
否定が優勢になってきてしまっているので本線に戻しますが、要はチャートの上下という問題よりも、「買いはゆっくり、売りは一気に」という現象が起こるかどうかは、「ペアとなっている通貨の特性」によって決まるように思います。
結論から先に述べますが、通貨ペア次第では、「買いはゆっくり、売りは一気に」という状態になりやすい特性を持っており、この通説はあながち間違いではないと私は思っています。補足説明はこれから記述していきます。
通貨には、「好景気に買われやすい通貨」「不景気に買われやすい通貨」というものが存在します。
リスクオン(好景気) | 豪ドル、ポンド、ユーロ、米ドル |
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リスクオフ(不景気) | 日本円、スイスフラン、米ドル(基軸通貨の観点から) |
ここが重要ですが、「買いはゆっくり、売りは一気に」という言葉は、そのままそっくり「好景気に買われる通貨はゆっくり、不景気に買われる通貨は一気に」と言い換えることができます。
この通説はおそらく間違いではないと思います。
ドル円ペアの場合、(好景気)米ドル>円(不景気)という関係性が成立します。米ドルは基軸通貨であるため、リスク回避通貨でもあるものの、円に比べると円の方がリスク回避通貨として海外投資家に好まれています。(世界有数の債権国であるため)
ドル円チャートでは「買い」は米ドル買い、「売り」は円買いであるため、「好景気に買われる通貨はゆっくり、不景気に買われる通貨は一気に」に当てはまります。
ユーロドルの場合、(好景気)ユーロ>米ドル(不景気)という関係性が成立します。米ドルよりもユーロの方がリスク好感、というよりもユーロは基軸通貨になりえない通貨なので、基軸通貨である米ドルの方が相対的に安全というような立ち位置だと思います。
ユーロドルチャートでは「買い」はユーロ買い、「売り」は米ドル買いであるため、「好景気に買われる通貨はゆっくり、不景気に買われる通貨は一気に」に当てはまります。(少し印象操作が入ってます)
ユーロドルの場合、そこまで売り買いの動きに差はありません。相対的には米ドルの方がリスク回避通貨ですが、狂ったようにユーロが買われることもあれば、反転して一気に売り叩かれることもあります。
豪円ペアの場合、(好景気)豪ドル>円(不景気)という関係性が成立します。豪ドルは高金利通貨の代表であり、好景気に投資資金が集まりやすい特徴を持っています。
豪円チャートでは「買い」は豪ドル買い、「売り」は円買いであるため、「好景気に買われる通貨はゆっくり、不景気に買われる通貨は一気に」に当てはまります。
2007年の107.790円まではスワップポイントが流行した影響で数年掛けてゆっくり買われ、サブプライムローン問題および2008年のリーマンショックで一気に雪崩をうったように売り叩かれているのが分かります。
為替相場を中心に話を進めてきましたが、他の商品相場はどうなんでしょうかね?
商品相場としては金相場や原油先物相場などがありますが、ここでは原油を見てみたいと思います。
リーマンショックで一気に売られています。その後は数年かけて買い戻され、2014年半ば頃から再び早いスパンでの売り叩きが始まっています。
ここで紹介した通貨ペアや商品チャートは、典型的下落チャートばかりを集めているので、もちろん「買いはゆっくり、売りは一気に」に当てはまらいケースもあると思いますが、FX歴15年の私が過去の経験から思い返してみても、「あながち間違いではない」「そちらのケースの方が多い」という印象を受けます。
FX歴 | 15年(2008年~) |
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年利 | 8~15%(破産確率を考慮) |